
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。福井県で地域をまるごと体感できる宿 玉村屋をやっています、ショーです。
田舎に行くと数多く存在するのが「直売所」です。「道の駅」にある場合も。ここでは地元で採れた野菜が並んでいます。バリバリの専業農家さんが作ったものもあれば、ちょっと家庭菜園で作られている方の農産物も並んでいます。
そこで販売されている野菜は、その日の朝にとれた新鮮なものをお得な値段で売っているという印象が広がっており、地方にでかけると道の駅や直売所に立ち寄ることも多いのではないでしょうか。
ここに入って最初に感じるのが「安い」ということかもしれません。都会のスーパーだったら、150円で少ししか入っていないほうれん草も、袋にたっぷり詰まって100円。きゅうりが3本180円のときでも、5~6本入って150円など。普通のスーパーだと、農家さんが野菜を収穫してから、業者さんを間にはさみつつ運ばれることにより、本来の野菜の値段から上乗せされるものが多く、スーパーに並ぶ価格になってしまうのです。
そんな風に中間費用を抜くから安くなっていると思いがちの直売所ですが、僕自身はここに危機感を持っています。今回は「安い」という声よりも「生産者がわかって安心」ということをまとめてみました。
1.直売所に出す人も様々
直売所に野菜を出荷する地元の方々。一言に「出荷者」とまとめられますが、作り方も稼ぎ方も様々なのです。
① 地元のおじいちゃん、おばあちゃんが、家の家庭菜園で作ったもの
② 年金をもらいつつ、手広く野菜を育てる農家さん
③ 新規就農し、今から生活を整えていかなければいけない若手農家さん
僕が知っているだけでも、この3つのカテゴリーに分けられると思います。つまり、生活費に困らず趣味として作っている人と、仕事としてやっていて生活費を稼がなければいけない人が、同じ値段で出荷しているのです。
こう話すと「価格って自由に決められるんでしょ」と思うかもしれませんが、表向き自由に決められるものの、だいたいの目安価格があってみんなそこに合わせてくると言うこと。なぜなら、直売所は「安い」からお客さんが多いので、安くないのは売れ残ってしまうからです。
スーパーに卸す野菜は、そもそもみんなが仕事としてやってるから、そういう価格設定になっている(もちろん、たくさんできるときは価格が落ちることもあります)しかし、直売所は趣味として作っていて、生活に困っていない人も出すので、「安くて売れる」値段が標準価格になってしまうのです。そうなると、仕事として出している人は、それに合わせて安い価格で出さなければいけなくなってしまいます。
2.「安い直売所」は「安くないと売れなくなる」
では、直売所全体で値段を上げたらどうなるでしょうか。おそらく、「あそこの直売所は安くない」という印象が付き、他の「安い」直売所にお客さんが流れてしまい売上が落ちると思います。なぜなら、世の中では、直売所は「安く野菜が買える場所」と認識されているから。
直売所が世の中で知れ渡るようになったのは、2000年頃。1993年から整備されはじめた「道の駅」の直売コーナーが売上を伸ばし始めたのをきっかけにマスメディアが着目し、全国に知れ渡るようになりました。
その頃のテレビ番組をイメージすると、直売所の扉を開け、中に入ったレポーターが「きゅうりが5本も入って、100円!安いですねー」と言ったのではないでしょうか。その頃の記憶があるわけではないので、絶対とは言えませんが、今でもテレビで直売所を取材するときは、そんな感じのレポートをしているので、以前から変わらないのかもしれません。*あくまで、個人のイメージです。
本当は、安いだけではなく、誰がどこで作ったかわかる食材の安心感、朝に採れた野菜がそのまま売り場に並ぶ新鮮さ、これが直売所の魅力なのだと思います。とある道の駅を作っている担当者と話をしたときに出てきたのが「ここの売り場にお客さんが入って、『これで100円?!安い』と言ってどんどん買ってほしい」ということ。これを聞いたときに、この人と一緒に仕事をやるのは辞めようと思いました。なぜなら、「安さ」で直売所に人を集める悪しき文化を続けてしまいそうだから
趣味で作っている人が標準となっている「安い」値段を、仕事として生活の糧を得るためにやっている農家さんが合わせると、生活費が稼げなくなり、その結果、直売所に出さなくなる。もしくは「農業って生活費も稼げない」となり、農業すら辞めてしまう。そうなると将来的に出荷する人が少なくなり、品揃えが悪くなっていき、直売所としての魅力がなくなっていくと感じています。
3.直売所は「安い」ではなく、安心できる食材が揃うコミュニティに
直売所では生産者が誰かがわかります。生産者の顔写真が並べてあるところも多くあります。つまりは、こんな人が作っているという「人」を魅力として打ち出すことができるのです。
直売所は表面上、「野菜を出荷する」「野菜を買う」という場所ですが、実は、野菜づくりのこだわりを知ることができたり、なぜその野菜を作っているかのストーリーに触れられたり、そもそもなんで野菜を作っている?という人生観に触れたりすることができる場所なのです。

「安心で新鮮な野菜」が集まることで、人が集まる場所となり、生産者や消費者という枠組みを超えて交流するすることにより、野菜を介したコミュニティができる。
『野菜を買うなら、あのおばあちゃんが作った野菜がいいな』
『あの若手農家、会社をやめて野菜づくり頑張ってるから、彼の野菜を買って応援したいな』と直売所に足を運ぶ人が来る時代がやってくるといいなと思っています。