
こんにちは!福井県で地域をまるごと体感できる宿 玉村屋をやっていますナカタニ ショーです。
朝早起きをして、窓を開けると、外からまだひんやりとした風が入ってくる時間。手元にはコーヒー。そして、キーボードをカチカチと鳴らす時間。
「朝から仕事?」と思う人もいるかもしれませんが、僕はこの時間に頭から出てくる言葉をメモしている。そういう感覚なのです。
さて、そんな中、見つけたのがこちらのニュース
『ヤマトHD、「宅配便急増」でも喜べない深刻事情/東洋経済』
要約すると、クロネコヤマト、佐川急便、日本郵便の比較の中で、
クロネコヤマトは
① 営業収益が他社に比べると低い
② 自前主義(=自社の社員が荷物を届ける)により、人件費が高い
③ 他社は中小事業者に配送委託をしていて人件費を浮かせて、効率化している
ということが書かれています。この見解は「ビジネスの王道的」には正解と言えると思います。

ビジネスの先にあるのは人間
ビジネスというと、僕には少し冷たい印象がある。しかし、語源を探っていくと「bisignisse」が最初に登場し、現代のビジネス(仕事)につながっていったとのこと。この古代英語が持っていたのは「care(ケア)」、「anxiety(心配事)」といった意味だったのです(Chambers, 1988)
つまりは、(他人の)心配事をケアするのが仕事。そう考えると、ビジネスの先にあるのは誰か「人間」の幸せな状態と言うこと。そういう語源があったにも関わらず、冷たく感じてしまうのは、「営利企業」として営利だけを求める世の中の流れなのでしょうか。
もう一つ、ビジネスに近い言葉で「商い」という言葉があります。商いをやってきた人たちの中に「近江商人」と呼ばれる人たちがいます。彼らの信条は「三方よし」、買い手(顧客)と、売り手(自分たち)そして、世間(世の中)の3つの側面から見て良いことをしていくということなのですが、有名なエピソードの一つに彼らの行商は中山道を通ったという話があります。当時、多くの人が行き交ったのは中山道ではなく、東海道。こちらの方が多くの商人たちが行き交うため、物品が豊富だったのです。一方、中山道は険しい道が続いたことから、通る商人が少なく、物品が不足しがちで街道沿いの住民たちは不便を強いられてたとのこと。これを聞いた近江商人たちはあえて人が選ばない険しい道を選び、中山道を通ったとのこと。これは、困っている人たち(の心配事)をケアする、という本当のビジネス(商い)だったと言われています。
つまり、ビジネスの先にあるのは「人間」
どんなけ情報網が進化しようと、その先にあるのは「人間」であることは変わりないのです。
人件費削減=誇り創出?
近江商人の信条の一つにある「売りてよし」という考え方。これは商品の販売者、もしくはサービスの提供側も「良い状態」であることが大切と言うことです。話を現代に戻してみましょう。先程のクロネコヤマトの例では、配送を委託することによってコストを下げるということが書かれています。例えば、配達員の報酬や待遇が、自社でも委託業者でも同じであれば、委託すれば良いと思います。しかし、実際はそんなことにはならないと思います。コストを下げるために人件費を下げたり、待遇を下げたりする。そうすることによって、コストダウンを図っていると考えられます。
そうなると結局のところ、配達員の気持ちに立つと「きついのに、こんな安い給料かよ」となり、仕事に対する誇りが失われていくのではないかと考えられます。
『利用したい宅配便、1位はヤマト 顧客対応など高評価』/ITmedia
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1712/20/news097.html
2017年のデータですが、消費者が「最も利用したい」と考える宅配事業者の1位に51.2%で堂々のランクイン。2位の郵便は16.5%と言うことで、圧倒的な顧客満足を獲得しているヤマト運輸。ここには待遇の良さやヤマト運輸の社員という誇りが配達員に根づいており、接客に現れているのではないかと感じています。
今までは物が溢れていたから、薄利多売。安いものを選んでいた時代だと思います。それがだんだんと時代の変化で「高くても良いもの」を選ぶ人たちが増えていると感じています。ただ「物を運ぶ」かもしれないけれど、届ける先にいるのは「人間」。だからこそ、人が満足するサービスを提供することが商売の価値になるのではないかと考えています。

地方起業に置き換えてみる
これを地方起業に置き換えて考えてみました。まず、地方の起業において「薄利多売理論」は全く使えません。なぜなら、多売する対象がいないからです。なんたって住んでいる人が少ない。そう考えるとビジネス理論で行くとかなりコスパが悪いのが地方起業なのです。
逆に地方では「わざわざそこに行く理由」がなければ、ゲストは来てくれないのですが。だから、コストを下げて安くするよりも、コストをしっかりとかけ、三方良しで売り手も心地よく商売をする。そうすることで、自然とゲストひとりひとりに丁寧に対応ができる。この丁寧な対応には「仕事への誇り」と「時間」が必要になってくると思います。
「時間」の部分でいうと、例えば100分の時間で、10万円分販売したいとします。1,000円の商品を売るならば、100人に売らなければなりません。商品を10,000円にすると、10人が買ってくれるとOKなわけです。100分持ち時間があるならば、1,000円なら一人1分しかかけられませんが、10人なら10分かけられる。どっちのほうがゆとりを持って対応できるかというと、答えははっきりしています。
次に仕事への誇り。これは職場環境なども関わってくるので一概には言えませんが、そのうちの一つは「報酬」なのではないでしょうか。安い報酬=自分の価値を安く見られている。これだと誇りも削がれていきますよね。逆に報酬がしっかりしていると「自分の価値を高く見てもらえる」=これが自信につながり、誇りにも影響していると考えています。
クロネコヤマトから見る、地方起業の育て方
まとめると、
① これからは薄利多売の時代ではない。都会なら購入者が多いので、多売が成り立つから、薄利でもやっていける可能性はある。地方は購入者が少ないので、多売は成り立たない。
② 価値を上げる売り方をするなら、売り手側の誇りも大切。誇りを育てるには仕事への自信が必要で、自信を育てる一つの指標に報酬や待遇がある
ということを考えました