空き家だけど空き家じゃない -住みたい空き家が借りられる、たったひとつの真実-

 

ショー
こんにちは!地方移住して8年目に突入しようとしているナカタニ ショーです。

 

最近は、福井県で地域をまるごと体感できる宿の運営をしたり、観光協会の事務局をやったり、オンライン講座の運営や農業のお手伝いなど複業家として暮らしています。

 

移住希望の方から相談を受けることが多いのですが、その中で出てくるのは

 

移住希望者さん
 地方移住をして、安い空き家を借りたい 

 

という話。

 

正直なところ、ぼくも移住前まで

ショー
 こんなに家が余っているなら貸しちゃえばいいのに 

と思っていました。

しかし、実際に移住して空き家と関わってみるとそんな簡単な問題ではないことに気づきました。

 

逆をいえば、そこをクリアすれば空き家を借りられる可能性がぐぐっと上がります。

そこにはたった一つの共通点があったのです。

 

それは、
空き家は所有者さんの思い出が詰まったおうち
貸すための賃貸物件ではない
ということです。

 

想像してみてください。自分が幼少期を過ごしたおうち。両親は亡くなってしまったけども、そこには親兄弟との思い出が詰まっている。そのようなおうちと「賃貸用物件」を同じ感覚で見てしまっては、絶対に借りることができません。

さらに詳しく見ていきましょう。

 

空き家は”空き家じゃない”

 

 国交省によると「空き家とは、1年以上住んでいないもしくは使われていない家」と定義されています。
(空家等対策の推進に関する特別措置法」2015年2月26日施行)

 

しかし、実際のところ
☑ 普段は住んでいないけど、お墓参りのときの休憩に使う
☑ 年に1度、親を偲んで兄弟が集まり法事をする
☑ 帰省したときに、両親の家だと嫁が気を使うので、泊まるのは近くにある家
など、年に数回だけ利用するという人も多い印象です。

 

そのようなことから、普段は空いているように見えても、実際は限られた時間だけ使っているというのも多数存在します。

 

”周りを気にする”田舎の事情

 

 結論からいうと

空き家所有者さん
あまり知らない人に家を貸して、近隣の人とトラブルを起こしたら困る

というところ。

 

田舎は都会とは異なり、周りの人たちと共に生きてきました。

例えば、近隣に親戚くらいの関係性の人が住んでいるという状況をイメージしてみてください。

一般的な賃貸物件みたいに不動産業者のカウンターに来た、自分はどんな人か知らない人に貸したら、その人が夜中にドラムを打ち鳴らすような人だった。今まで近くに住んでいた親戚から「あの人、夜中に騒音を出して迷惑。なんであんな人に貸したの?」と言われてしまうと、自分も巻き込まれたトラブルに発展してしまいますよね。それ以上に、今まで親戚のように接してくれていた人たちに迷惑がかかっているという辛さ。このようなことからも、「あまり知らない人」に空き家を貸したいとは思わないでしょう。

 

さらに別の視点として「家を貸したらお金に困っていると思われるかもしれない」という所有者の心配事があります。いわゆる不動産投資になるような賃貸物件とは異なり、自分のものを貸すということは「お金に困っているんじゃないの?」と周りの人に勘ぐられてしまう。世間体を気にする人にとっては貸しづらい事情のひとつとなります。

 

もう年1回の集まりもなくなったから、自分たちは使わないし、なんとかしたいと思ったときに出てくるのが、こういった「気持ち事情」なのです。

 

 

貸したくても貸せない理由

 気持ち事情ではなく、物理的に貸せないという理由もあります。

お仏壇がまだおいてある

 お仕事で空き家調査に入らせていただくときに見るポイントのひとつが「お仏壇があるかどうか」「お性根抜きがされているかどうか」があります。既にお仏壇が処分されている家だと貸すまでの物理的なハードルがひとつ下がるほど、重要なポイントです。

 

空き家となるような家には以前はお仏壇があるのが当たり前。しかし、このお仏壇の処分に手間がかかるのです。お仏壇は先祖との架け橋として魂が宿っていると考えられています。そんな魂が宿っているものを“大型ごみ”として出すことはできないのがお仏壇事情。まずは、お性根抜きという「仏壇やお墓に宿っている魂をお坊さんに抜いてもらう仏教の儀式」をした後に、業者に引き取ってもらうのが一般的なのです。

 

つまり、お仏壇の処分には手間がかかるから、気合を入れないと取り掛かることができません。そして、お仏壇は「先祖代々継がれてきたものであり、高価なもの」という価値観も相まって、お仏壇の処分は後回しになってしまうことが多いようです。

 

両親などの荷物が片付けられていない

 

 空き家は、誰かが暮らしていた場所。その人が住まなくなったが、暮らすために必要だったものを全部持っていっているとは限らないということです。

 

 「空き家」ができる主な流れ
家族で暮らしていたが、子どもたちが独立し、家を出る。
昔は長男が家に残ったが、今の時代では長男すらも都会の企業に勤めるため、実家を出るのです。
そして、独立した子どもたちはそれぞれの場所で家庭を持ち、家を購入。
その後、年老いた両親が病気になり病院に入院、もしくは介護が必要になり介護施設に入ってしまう。
しかし、両親は病気が治ったら、介護がいらなくなったら自宅に戻りたいという思いがあるので、自宅はそのまま。本人たちもいつかは戻るつもりでいる(戻りたいと思っている)ので、仮住まいとして必要なものだけを病院もしくは介護施設に持っていくのです。
しかし、多くの人はそのまま病院や介護施設で亡くなることも多く、家主が戻らぬ“おうち”には、家族が暮らしていたときに必要なものが残された状態になります。

 

 僕が宿をやらせてもらっている家屋は、かつては空き家でした。所有者さんから「中のものはすべて処分してもらってもかまいません」とお話いただいたので、宿で使いそうなもの以外はクリーンセンターに持ち込み処分をしたのですが、合計3,900キロにもなりました。

 言葉を選ばずに言うのなら、ぼくは他人なので家や家にあったものに思い入れがないので、処分できましたが、これが自分の両親が使っていたものなら・・・と思うと処分には相当な気合と時間が必要なことが想像できました。

 

 このように家は使っていないけども、家族の荷物がそのままおいてある場合は、なかなか貸すことができません。

 

家の一部が損傷していて「こんなの貸せない」と思っている
  家に対して「こんな不便な物件」というネガティブイメージがある

 

 これは気持ち的な部分も大きいのですが、家を貸すことについてハードルが高く感じている人が多くいます。

 そもそも「空き家」になったのは自分が出ていったからで、「自分が出ていくような場所」という潜在意識が、家をネガティブに捉えているように感じています。特に所有者さんの年齢が上がれば上がるほど、ネガティブイメージが強い傾向があります。

 

 

そんな空き家を借りる方法

 

 だからと言って、借りるのを諦めるのでは、問題の解決になりません。都会では常識的になっている「貸してもらって当たり前」という意識を捨てて、相手も貸したくなるような提案をしていってみましょう。

 

相手の思いを尊重する

 今までのところで、所有者さんの気持ちが少しは伝わったかと思います。なので、どうすれば所有者さんが貸したいと思うのかを相手の気持ちを尊重して考えていきたいと思います。

 まずは「知らない人に貸したくない」というところには、信頼を勝ち得ないといけません。長年の知り合いであれば貸してもらえるかもしれませんが、それまでは月日がかかるもの。そこで、自分のことを知ってくれていたり、思いを伝えられている人に紹介してもらうのが良いでしょう。都会で暮らしている人が思っている以上に「人からの紹介」が重んじられる田舎の特徴を活かす方法です。

いやいや、移住する土地に知り合いなんていないよと思うかもしれません。

そういうときは、何度も通い地元の人とのつながりを作って「何度も来るから、本気で移住したいんだろう。だったら空き家の所有者に話をしてやる」と思われるようになる日を待つのです。

 

<エピソード/お仏壇を拝んだら、家が借りられた>
 ぼくの友人が、紹介してもらって空き家を見学しに行ったときの話。あまり所有者さんは乗り気じゃなかったそうです。紹介だからしかたなく、所有者さんが家の鍵を開け、中を案内してくれている最中、友人はお仏壇を見つけました。そして何気なくお仏壇を拝んだそうです。
その後、所有者さんと話がはずみ、家を借りられることになったということ。あとから聞いたところによると、「先祖への敬意を払ってくれたから貸した」という話だったそうです。
これ以来、ぼくも空き家を見せてもらうときは所有者さんの気持ちを汲み、その家の歴史を大切にするようになりました。

荷物は一部屋にまとめてもらって触らないという選択

所有者さん
 家族の荷物があって、処分しきれないから貸せない 

という方には、荷物を一部屋にまとめてその部屋にあるものは触らないという提案をしているのもひとつです。田舎の家は大きくて部屋数があるので、人部屋くらい物置にしたって住むにはなにも困りません。

 

 所有者さんからすると、なかなか家族との思い出の品は捨てられないけども、かと言って今の自分の家に持ってくるのはスペースの関係上難しい。だから実家である空き家においておくという状態が多いのです。本来は問題の先送りなのですが、そうは言えないので、置いといてもらっても自分は問題ないということを伝えると「そういう方法があるんだ」と所有者が気づくことも多いのです。

 

DIY可能にしてもらうことで修繕

 家屋は人が住まなくなると損傷が進みやすくなると言われています。家屋は人が暮らすことが前提で作られているので、人が住まなくなることで空気の入れ替えがなくなったり、湿度が程よく管理されなくなると、痛みやすくなってしまうのです。

 ほぼ空き家のような形で年1回程度しか使わなくなった家屋は、床下の痛みやシロアリ、天井の痛み、雨漏りなど、様々な形で痛むので、人が住んでいると発見も早いのですが、年に1回だと発見が遅れかなり悪化した状況で見つかることも。

 空き家バンクを見ていると、「修繕不要」な空き家が出ていることの方が稀で、「一部は修繕が必要」といったような状況がほとんど。そんな家の状態だからこそ、「人様に貸すのは申し訳ない」と思う所有者も多いのです。

 だからこそ、DIYが好きな人は「DIYしてもいい(原状復帰しなくても良い)」という契約方法を提案し、「むしろ修繕したいんです」を提案していくと所有者さんも貸しやすくなると思います。

 

 最近、国交省がガイドラインを出したので、所有者さんにその話をすると安心してくれ、貸し出してもらいやすくなるかもしれません

国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。…

 

 

まとめ

 

 地方移住を考えている人だと「田舎では空き家は安くで借りられる」という情報を持っていると思います。

しかし、その安さには「信頼」というキーワードが必須になってくるのです。
つまり、金銭的家賃+信頼が実際の家賃のような感じ。

 

 だからこそ、そもそも賃貸用の物件ではなく、所有者さんの思い出がつまった物件であることを意識しつつ、話をしてみると気に入った物件を貸してもらえるようになると思います。

 

 

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 東京の会社に勤め、帰りは日付が変わる頃。土曜日、目覚めたら夕方になっていた。これが、8年前の自分自身です。
 その当時は、今の「複業暮らし」なんて想像もしていませんでした。
 だから、あなたも大丈夫。複業暮らしは誰でもすることができます

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